一時期、青春小説に凝ってて、そういう小説ばかりを追いかけてたんだけど、青春小説といえば名作の呼び声が高い「青が散る」・・・。もちろん読んだ。作者は宮本 輝。なかなかの人気作家だ。
最初に期待してたせいか「青が散る」を読んだときの感想は、それほどでも無いんだよなぁ。というか、けっこう辛口の感想を残してた。
ブクログに記録してた感想なんだけど、こういう事を書いてる。
青春小説の傑作との呼び声が高い本書、本屋に行ってもなかなか上下巻そろって置いてなく、ブックオフで上巻を街の本屋で下巻を買って、一気に読んでみた。
印象は、古臭い・・・。
なんなんだろうね、この印象は文体から受けるモノなんだろうか?この小説の時代設定と近い年代に学生時代を過ごした自分としては、懐かしい匂いも感じたんだけど、古臭さも感じてしまった。
青春小説なんだけど、「熱」を感じられない小説だったな。大学のテニス部を舞台に、主人公を中心にした出来事を大学入学から卒業までの四年間を描いてるんだが、淡々とし過ぎてる。
テニスというスポーツを一つの軸にしてるのに、スポーツに打ち込むある種の「熱」が描かれてないのが残念でもあり、肩すかしでもある。三浦しをんの「風が強く吹いている」のような「熱」があれば良かったんだけど・・・。
それと、入学から卒業までの四年間を上下巻二冊で描いてるんだが、山が無いんだな。いろいろと癖のある登場人物も出てくるんだが、どの人物も描き切れてない印象。描き切れてないから、イメージがボンヤリしてしまって・・・。
同じ四年間を描いたものなら伊坂幸太郎の「砂漠」の方がはるかに秀逸。
この小説の主人公、椎名燎平、読み終わっても成長したのかどうか分かりにくい。
青春小説の醍醐味って、何かに打ち込んで「熱」を発散したり、登場人物たちの成長する姿だったりと思う自分としては、いささか肩すかしの小説だったな。
☆3個。
うん、かなり辛口だな。
まぁ、当時は青春小説ばかりを追いかけてたし、読んだ時の精神状態なんかも読後感に影響するだろうから、今、再読すると違う感想になるかもしれないけどね。
それ以来、宮本 輝を読む事は無かった。良い作品を出してる事は知ってるし、映画やドラマ、舞台でも取り上げられてる事も知ってるけど、なんとなく彼の小説に触れる機会が無かったんだよなぁ。まぁ、敬遠してたとも言えるか。
そんなところへ、食指が動く記事が・・・。
「泥の河」ってタイトルは有名な小説なので聞いた事があったし、観た事は無いけど映画になってる事も知ってた。
が、作者が宮本 輝だと!?
これは繋がらなかったんだよなぁ。
有名な「泥の河」宮本 輝が書いてたのか・・・。
読んでみよ!
って訳で、さっそく買ってきて読んでみたんだけど・・・
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オレは、この小説を読んで、
震えた!
100頁にも満たない小説なんだけど、濃密で奥が深い。
ありきたりな言葉だけど、「凄い」って言葉しか出てこない。

物語は昭和30年の大阪。まだ世の中は戦争の傷跡も残ってて、みんなが貧しい時代だ。大阪に流れる川の畔に住む少年と、極貧といってもいい廓舟に暮らす姉弟との短い交流を描いてるんだけど、目の前に情景が浮かび上がってくるような文章。
冒頭の馬車引きの死から、一気に物語に引きずり込まれる。
二人の少年の出会い洋服を着せられた時の姉の様子少年に向けられる差別的な目とじっと耐える少年天神祭での少年たちの様子蟹に火をつける場面・・・
この小説はすべてが印象に残る。
無駄な部分が無いのだ。
馬車引きが残した鉄屑を盗もうとしてた少年、それを見つけた少年との出会い。
この「盗む」って行為が、後半の天神祭での少年の行為伏線になってるような気もするし、上手いんだよね。履いてる靴の描写から、この少年が豊かな生活を送ってない事を示したり、見事な描写だ。

現代の豊かな時代じゃ想像も出来ないかもしれないけど、ほんの60年前は日本もこうだったんだよなぁ。昭和30年なんて、もちろん生まれてはないけど、オレが幼稚園とか通いだして物心がついた頃も、山口県なんてこの小説と似たような匂いが残ってたからなぁ。さすがに馬車引きなんてのは見た事もないけど、この小説に出てくる言葉「パンパン」なんてのは普通に聞いていたぞ。
「あそこの子と遊んじゃダメ」って言うオレの母親の言葉も思い出した。今で言う差別的な発言なんだけど、あの頃は、今とは違う意味での差別・被差別ってのも有ったように思う。普通に居たからな、そういう差別される人が、どこの町にも・・・。ほとんどの大人が、そういう差別をしていて(オレの親もだ)、そして、それを聞かされた子供たちは、無邪気にその差別的な発言を本人に言う。この小説に出てくる双子の中学生みたいにな。
この小説の中では、そういう差別的な表現、描写も出てくる。
それも残酷なほどに・・・。
そして、それに耐える少年。傍に居て、どうして良いのかわからずにいる少年。
新人類と呼ばれたオレの世代でも、この小説に出てくる情景は、充分に記憶の片隅にある情景だ。

姉弟の母親と初めて顔を合わせる場面、ここは、子供が初めて体験する「エロス」だな。具体的に何がどうなる訳じゃないけど、この辺りの心理描写も巧みだ。誰もが経験するだろう、あのドキドキ感、何とも言えない焦燥だな。この母親、生活するために、廓舟の中で体を売って姉弟と暮らしてるんだけど、幼心にもそれを恥ずかしく思ってる姉弟。
「夜は、あの舟に行ったらあかんで」という父親、それを不思議に思う少年、母親の事を想う姉弟・・・。
「お米がいっぱい詰まってる米櫃に手ェ入れて温もってるときが、いちばんしあわせや。・・・・・・うちのお母ちゃん、そない言うてたわ」
もうね、いろんな要素が100頁にも満たない小説に詰め込まれてる。
いやぁ、凄い小説を読んだ。
ハッピーエンドでもないし、明るい未来を感じさせるような結末でも無いけど、二人の少年の交流を軸に生きる事の「意味」「恐ろしさ」を描いた傑作。
この本の中には、もう一つの小説「蛍川」が収録されているんだけど、今回は、そこまで読む精気を吸い取られてしまった。「泥の河」だけでノックアウト・・・。
今日は余韻に浸っていたいのだ。


いつものバイト君の下書きチェックだ。
の予定だったんだけど、目がウルウルして、とても誤字・脱字を見つける事はできなさそうなので、自分でチェックだww
さっき、無理やり「泥の河」を読ませたんだけど、妙に感動しちゃってウルウルしてるし・・・。
想ったんだけど・・・
若くてもこの小説の良さを感じ取る感性は、
大切!
豊かな時代だからこそ、こういう小説の良さが分かる人でありたい、って思ってるぞ。







次回の予定~
ウ〇コが漏れそうだったので、外でウ〇コした!って話
(閲覧注意!)